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耐食性

金属は腐食します。『腐食』とは金属が酸素と結合し、化合物を作る現象のことです。腐食させないためには、酸素等の腐食因子から金属を守る必要があります。これを『防食』と呼びます。また、防食能力が高いことを一般的に『耐食性が高い』と表現しますが古くから無電解ニッケルめっきも耐食性の高い表面処理の一つとして知られています。

 

以下では、無電解ニッケルめっきの耐食性について、2つの観点からご説明します。

 

1) 『緻密性』

腐食因子が素地へ到達し素材を腐食させるのを防ぐために、めっき皮膜の緻密さが重要です。緻密で尚且つめっき表面から素地に至るピンホールが少ないほど、めっきした金属を腐食から守るバリヤーとして高い効果を発揮します。

 

2) 『耐薬品性』(耐酸性、耐アルカリ性、耐有機溶剤性)

めっき皮膜自体が緻密で素材金属を完全に覆っている状態であっても、めっき自体が酸やアルカリ、有機溶剤等に侵され腐食・溶解してしまっては元も子もありません。このようなめっき皮膜自身が腐食される環境下では徐々に防錆効果が失われていきます。従って、溶媒に対する溶解性を耐食性の一つの指標として評価する場合があります。

緻密性

めっきを含む表面処理の耐食性確認方法の一つとして、中性塩水噴霧試験が一般に用いられています。一定の温度・濃度(NaCl 5%)の塩水を霧状に噴霧した環境下に暴露することにより腐食を促し、レイティングナンバー法で腐食点の発生数や腐食面積率を評価します。なお、レイティングナンバーは0~10で表され、腐食が全くなく良好な耐食性を持つ皮膜を10とし、50%以上の腐食面積率となる場合を0と評価します。

 

例として以下に、日本カニゼン株式会社 群馬工場で製作した下記3種類のめっき皮膜の塩水噴霧試験結果を示します。

①カニゼンめっき(Ni-P・中りん)

材質:SPCC

 

カニゼン(Ni-P)
膜厚 試験時間 熱処理なし 200℃ 300℃
10μm 3h 10 10 8
24h 10 10 6
48h 10 10 5
100h 10 10 5
30μm 3h 10 10 10
24h 10 10 8
48h 10 10 8
100h 10 10 8

※グラフのデータは日本カニゼン群馬工場での実験値であり保証値ではありません

 

上図はカニゼンめっき 10μm200℃熱処理テストピースを左から塩水噴霧3h、24h、48h、100h処理したもの。カニゼンめっきの200℃熱処理品は100hの塩水噴霧試験でも錆が出ない。変色のみ。

②カニフロンS(Ni-P/PTFE・中りん)

材質:SPCC

 

カニフロンS(Ni-P+PTFE)
膜厚 試験時間 熱処理なし 200℃ 300℃
10μm 3h 10 10 10
24h 10 10 9.3
48h 10 10 9.3
100h 10 9.8 7
30μm 3h 10 10 10
24h 10 10 9.8
48h 10 10 9.5
100h 10 10 9.3

 

※グラフのデータは日本カニゼン群馬工場での実験値であり保証値ではありません

 

上図はカニフロンSタイプめっき 10μm200℃熱処理テストピースを左から塩水噴霧3h、24h、48h、100h処理したもの。カニフロンSタイプめっきの200℃熱処理品は100hの塩水噴霧試験でも錆が出ない。変色のみ。

③カニボロンめっき(Ni-P-B・低りん)

材質:SPCC

カニボロン(Ni-P-B)
膜厚 試験時間 熱処理なし 200℃ 300℃
10μm 3h 10 10 10
24h 9.5 9.5 10
48h 9.3 9.5 9
100h 8 9.3 8
30μm 3h 10 10 10
24h 9.5 9.5 9.8
48h 9.3 9.3 9
100h 8 8 8

 

※グラフのデータは日本カニゼン群馬工場での実験値であり保証値ではありません

 

上図はカニボロンめっき 10μm200℃熱処理テストピースを左から塩水噴霧3h、24h、48h、100h処理したもの。カニボロンめっきの200℃熱処理品は100hの塩水噴霧試験でも錆らしきものが見られる。

【テストピース製作条件】

テストピース素材:SPCCブライト仕上げ

めっき種類:①カニゼン、②カニボロン、③カニフロンS

めっき厚:1) 10μm、2)30μm

熱処理温度:a)未熱処理、b)200℃、c)300℃

上の結果からは、膜厚が厚く、熱処理が200℃以下のケースで最も高い耐食性が得られることがわかります。また、皮膜別に見るとカニフロンめっきやカニボロンめっきよりも、カニゼンめっきが高い耐食性を有することがわかります。 (200℃までは膜厚10μm、30μmともにほぼレイティングナンバー10です。)

 

このめっき皮膜間の塩水噴霧に対する耐食性(=緻密性)の差は以下のような要因により生じます。

  • 析出時の皮膜の結晶構造 (カニボロンめっきは微結晶。カニゼンやカニフロンは非晶質です。)
  • 熱処理時の皮膜の結晶化進展度合
  • 皮膜の複合物の有無や量 (カニフロンめっきはテフロン・PTFE粒子がNi-Pの組織に取り込まれ(=複合され)ている)

→混ぜ物(複合物質)が無く、結晶化していない程、耐食性が良い傾向があります。

 

以上のように、めっき皮膜の緻密性も耐食性の一つの要素です。特に無電解ニッケルめっきは電気めっきと比べピンホールが少なく、緻密であるため、優れた耐食性が得られます。

耐薬品性

無電解ニッケルめっきがどんなに緻密でバリアー性の高い皮膜であったとしてもめっき皮膜自身が腐食・溶解してしまうような環境下では本来の高い耐食性を発揮できなくなります。従って、無電解ニッケルめっきの耐食性を議論する上では、どのような環境で使われるかも重要な要素になります。参考まで、以下に無電解ニッケルめっき(カニゼンめっき)の耐薬品性評価結果をご紹介致します。

塩酸
pH4以下
× 硫酸第二鉄 × ホウ酸 ◯ エチルアルコール ◯
塩酸
pH5以上
△ リン酸 × 亜鉛酸ナトリウム ◯ メチルアルコール ◯
塩素ガス(乾) ◯ 酢酸 △ シアン化ナトリウム ◯ ブチルアルコール ◯
塩素ガス(湿) △ モノクロル酢酸 △ シアン化カリウム ◯ ベンチルアルコール ◯
塩化水素ガス
(乾)
△ 酪酸 △ シアン化バリウム ◯ グリセリン ◯
塩化水素ガス
(湿)
△ 乳酸 △ 石鹸 ◯ グリセロール ◯
クロロフォルム
(水分なし)
◯ プロピオン酸 △ アルカリ性洗浄剤 ◯ 脂肪族アルコール ◯
ジクロロベンゼン
(水分なし)
◯ クエン酸 △ アルカリ性
バルブ蒸解液
◯ 脂肪類 ◯
四塩化炭素
(水分なし)
◯ 炭酸水 △ 黒液 ◯ ソルビトール溶液 ◯
アクリルクロライド
(水分なし)
◯ ビール △ アンモニア水 × アセトン ○
塩化アルミ ◯ 醤油 ◯ 漂白剤 × ナフサ
(無臭)
○
塩化第二鉄 △ アミノ酸 ◯ 原油 ◯ デキストロース
(ぶどう糖)
◯
塩化第二銅 △ 高級脂肪酸
(ステアリン酸等)
◯ ガソリン ◯ でんぷん糖 ◯
クロム銅 △ バター ◯ 石油 ◯ グリコーズ ◯
弗酸 × 水酸化ナトリウム ◯ ベンゾール ◯ ゼラチン ◯
硝酸 × 水酸化カリウム ◯ アセチレン ◯ 糖蜜 ◯
硫酸 △ 水酸化リチウム ◯ タール
(タール油)
◯ フルフラール
(芳香族アルデヒド)
◯
硫黄 × 水酸化バリウム ◯ トリオール ◯ コバルトリノレート ◯
亜硫酸ガス × 過酸化ナトリウム ◯ トリクレン ◯ ジブチルフタレート ◯
二硫化炭素 ◯ 炭酸ナトリウム ◯ ジフェニール ◯ イソアミル、
オクチルフォスフェイト
◯
亜硫酸ナトリウム △ リン酸ナトリウム ◯ 臭化アセチレン ◯ チオ硫酸ナトリウム ◯
硫酸ナトリウム △ メタケイ酸ナトリウム ◯ 酢酸ベンゾール ◯

【注記】

① ◯:使用に適す。 △:条件により使用できる。 ×:使用できない。

② 素材に欠陥がある場合その欠陥および欠陥周辺の耐食性が失われます。

もし、ご使用環境が上表で◯になっているような薬品を使う環境の場合、無電解ニッケルめっきを素材表面に処理することで、高い防食効果を得ることができます。また、△・☓であっても腐食因子が液体なら皮膜が溶解してしまう可能性が高いですが腐食因子が気体(ガス)になる環境下では、無電解ニッケルめっきが高い防食効果を発揮するケースも多々あります。(特にハロゲン系の薬品でこのような事例が多くあります。)

 

耐食性にお困りの方は以上の内容も参考にして頂ければ幸いです。

 

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